仕事の受注と発注
ちょっと固い見出しになりましたが、クラウドソーシングは、ここ数年で、はじまったことではなく、10年以上も前から存在はしていました。
働く側、エンジニアやクリエイターと呼ばれる人々も、企業に属さず、フリーランスで働く形をとっている人も、10年前からいます。
それでも、10年前は、こんな価格じゃなかった。
確かに、世の中の経済状況の影響もあると思います。
しかし、IT・WEBにおける単価の下落幅は、もっと別な要因があるようにも思います。
平成25-26年のIT業界の業界規模(主要対象企業128社の売上高計)は6兆0,030億円となっています。
平成17年から20年にかけて増加傾向。平成21年には減少に転じましたが、平成22年から25年にかけて再び増加に転じています。
詳しい事は、経済産業省のHPや、IPAのHPにも記載がありますので、そちらをご覧下さい。
業界全体での売上や市場規模は伸びているにも関わらず、システム開発やWEB制作の単価は落ちている。
これは、何故でしょうか?
業界構造
ITの世界といっても、今では、分類することは、非常に困難な状況です。
ITやWEBは、あくまでビジネス(商売)の手段であって、その先には、様々な業種のクライアントがいます。
前回も書きましたが、建築業界のように。というのは、多重請け構造の事です。
最近では、建築業界ですと、新国立競技場の問題がありました。
あれも、見積もりを全て公開すれば、解ることでしょうが、「中間マージン」というのがどれだけの金額になっているんでしょうか。
IT業界で言えば、NTT、NEC、日立など大手SI企業だけでなく、広告代理店が、絡むことが非常に多いです。
確かに、ITやWEBのお仕事では、その目的や方法を定義するところからはじまるので、解らなくはないです。
しかし、結果として、クライアントの予算のなかで、実際のシステム開発費用・WEB制作費用は、50%以下となってしまうケースも、見てきました。
クラウドソーシング
最近では、ランサーズやクラウドワークスといった、クラウドソーシングを仲介するサービスがあり、開発や制作の一つの手段として利用されるケースが増えてきました。
実際に、この数か月、2社のサービスを利用しましたが、サービスが良い悪いではなく、そこに仕事を掲載している企業や人の質が、あまりにもひどすぎます。
なかには、なりすまし。に近いような形で、募集と提案だけ募って、発注を中止し、そのアイデアだけをつかう。といった事に利用している企業や人もいます。
更には、人材紹介や派遣へのあっせんといったことまでありました。
しかし、様々なお仕事を受注できるチャンスでもあり、利用者数は伸びているようです。
実際のお仕事を見てみると、その多くが、単純な作業であったりします。
それらの単価はいいんですが。
「ホームページ作成をお願いします。 予算5万~10万」
「クローラーを使った情報収集システムをつくりたいです。 予算30万」
こういうのが、非常に多いです。
こういったお仕事は、必ずトラブルになります。
何故か?
コスト意識が、ない相手とお仕事をすると、コストの理解や説得に、とてつもなく時間を要します。
そして、そういうお仕事の時ほど、イメージのみで仕事の良し悪しを判断します。
結局、
「イメージと違う」
「もっとこうしてほしい」
「こんなことも追加してほしい」
と、後から後からでてきます。
このあたり、仕事の発注の仕方というのをルール化できないものでしょうか?
特に、クラウドソーシングの情報を提供しているサービス企業様には、そのあたりにしっかりと取り組んでいただきたい。
まとめ
今回、愚痴や文句が多いイメージを受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、IT業界の人材不足は、本当に深刻です。
それこそ、保育所の問題よりも、もっと前から深刻なんです。
それは、多重下請け構造によるものだったり、クラウドソーシングだったりと色々な理由があるかもしれません。
ただ、どんなクリエイターやエンジニアだって、
よりよいものをつくり、クライアントのビジネスを成功させたい。
これは、誰しもが願っていることです。
だからこそ、業界的な標準価格というのを改めて定めてほしい。
切に願います。
それによって、中小企業が、大手と立ちあえない。とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、詳細な見積もりを、みれば一目瞭然なのです。
最適価格がなんなのか?は、確かに永遠の課題かもしれませんが、この時代、
IT力が落ちるということは、ビジネスで負ける。
ということに直結します。
業界内外の人々に、今一度、考えて向き合ってもらいたいです。
そして、価格について話し合えるようなNPO団体があってもよいように思います。
これは、あくまで談合ではなく、業界を守る手段だと思います。